電波法
風船を成層圏まで打ち上げ、
地球を背景に撮影する企画
電波法
スペースバルーンを打ち上げると、環境にもよりますが、およそ3万メートルとかで風船が破裂し、地上に落ちてきます。とんでもない高さまで打ち上げられ、途中には日本上空を東に向かって吹き荒れるジェット気流を通過することになるので、それはそれは遠くまで飛ばされてしまいます。当たり前ですが、目視で追いかけることなどできないので、落ちてきた機材の発見・回収手段を考えなければなりません。発見できないと、中に入っている高価なデジカメ等をそのまま失うだけでなく、最も重要なカメラ画像・映像を回収することができないので、何の意味もないのです。
いろいろ考えていたのですが、スマホが利用できれば一番楽。カメラもGPS機能もついていて、しかも軽いので、スペースバルーンにはうってつけ!・・・なのですが、念のため様々な調査をしたところ、スマートフォンは一切利用できないことが分かりました。
上空で使用できる無線、できない無線についてまとめたものがこちら。
上空で使用できる無線
- 専用無線
- 登録局簡易無線(上空用)
- グライダー無線
上空で使用できない無線
- 携帯電話
- 登録局簡易無線(地上用)
- 免許局簡易無線
- 特定小電力無線
上空で限定的に使用できる無線
スマホの利用について
スマートフォン(携帯電話)は、上空で使用することができない無線に分類されています。
これを詳しく述べると、ケータイやスマートフォンは「電波法」で「陸上移動局」に種別されると定められています。これは限りある電波の、公平かつ能率的な利用を目的とした日本の法律ですから、絶対に順守しなければなりません。
この陸上移動局は使用エリアに制限が設けられており、上空で使用することができません。iPhoneにも、飛行機に乗った時に使用する「機内モード」があると思います。機内モードにすると、携帯電話ネットワーク、Wi-Fi、Bluetooth、GPS、位置情報サービスという全ての通信機能がオフになります。この状態なら、カメラ機能を使って撮影をすることだけはできますが、GPSを含め一切の通信ができないため、地上に戻ってきた時の発見・回収手段がありません。故に残念ですが、日本におけるスペースバルーンでは、iPhone、Androidなどのスマホを使用することはできません。ガッカリ。
アマチュア無線機の利用について
そこで、限定的に使用できる無線を調べていくと、アマチュア無線が浮上します。
アマチュア無線を上空で使用する場合、電波法施行規則第3条第1項第15号「アマチユア業務 金銭上の利益のためでなく、もつぱら個人的な無線技術の興味によつて行う自己訓練、通信及び技術的研究の業務をいう。」の範囲内であれば、アマチュア無線機を上空で使用できるとあります。この範囲を超えて運用した場合は、電波法第52条(目的外通信の禁止)違反となります。
アマチュア無線機の中には、GPS機能を内蔵、もしくはオプションで追加することができる機種があります。GPS衛星は高度20,200km近辺に30基程浮いており、その中の3基以上と信号のやり取りができれば、うまくいけば数メートルの誤差で緯度・経度・高度等を知ることができます。
当方も、無線機のメッカ、秋葉原に行って来ました。ありとあらゆる種類のアマチュア無線機が置いてありましたが、店員さんと相談し、スペースバルーンでの使用に耐えられそうな機種を模索できました。結果、八重洲無線の「VX-8D」に「FGPS-2」というGPSユニットを付けたものがベストだろうという結論に至りました。これなら、GPSで位置情報を得られれば、地上にいながら、リアルタイムに緯度・経度・高度情報を得ることができ、追いかけることができます。